posted by 藤巻法明(印刷会社勤務)
〈あかんあかん〉〈なんぼええもん描いたってそないに売れるもんじゃない〉〈ええもんは一般の読者が買おてくれるなんて、そら夢みたいな話や〉〈貸本は最初から売本とは別のルートでまかれるんや〉〈書店には並ばへんのや。うちで出してるのは、あくまで貸本屋向けなんやで〉とは〈資金繰りのために次から次へと点数を出さねば会社はたちまちお手あげ〉な日の丸文庫社長の言葉だ(『劇画バカたち!!』松本正彦、二〇〇九年、青林工藝舎)。
老女が番をしていた古本屋の情景を思い出す。元々は貸本屋で、以前に貸していた漫画単行本が主な商品だった。この店で石森章太郎の『テレビ小僧』を小学生の私は買った。黄緑と橙の二色が目立つ表紙の青林堂版だ。
話は変わる。レコード業界も映像ソフト業界も出版業界も創作物を複製したパッケージ(レコード、ビデオ、本)を売ることで成り立ってきた。今ではレコードがCDにビデオはDVDへとパッケージは成り変わったが、本だけは成り変わらない。本には再生装置というハードが必要ないからだ。本は記録媒体であると同時に再生装置も兼ね備えている。しかし。ここ数年。本と同じように記録と再生の機能を持ったハードが発売。携帯電話もその一例だ。音楽や映像といった創作物はデジタルデータとしてインターネットを介したダウンロードもしくはストリーミングという方式で販売され、パッケージに依存した従来の方法は脅かされている。

