posted by 大原けい(Lingual Literary Agency, NewYork)
1月29日の週末、何の予告もなしに米アマゾンのサイトから大手出版社の一つ、マクミランの本が急に買えなくなった(マクミランはドイツのホルツブリンクを親会社とし、傘下のインプリントには、一般書のセント・マーティンス、SF/ファンタジーのTor、文芸のファラー・ストラウス&ジルー、ノンフィクションのヘンリー・ホルトなどを持つ)。断片的な事実関係が明らかになるにつれ、キンドル版Eブックの価格を巡る争いが発端になっていたことがわかった。
アメリカで約2年前から発売になったキンドルは、パソコン画面よりも目に優しいEインク、パソコンにつながなくても1分以内に買ったタイトルをダウンロードできるG3ネットワーク、通信費はアマゾン持ち、などの理由で着実に浸透していった。読書好きの人にとって何よりも魅力的なのが、ハードカバーならどう安くても20ドルはする売れ筋の新刊の多くが、キンドル版なら本屋に足を運ぶこともなく即座に9.99ドルという値段で読めることだ。
ただしこれは、アマゾンがハードカバーを1冊売ったときと同じ売上げを版元に渡す条件だったので、キンドル普及のため、しばらく赤字大出血を覚悟でアマゾンが一方的に設定した値段だったことも確かだ。出版社側にとっては、ハードカバーが売れようが、キンドル版がダウンロードされようが、同じ売上げが懐に入ってくるのだから、アマゾンがどちらを売っても構わないように思えるかもしれない。しかしその一方で、自社のキンドル版Eブックの値段設定に対し、何の発言権もないこと、Eブックの値段に比べて、書店に並ぶハードカバーの新刊が割高に見えてくることを懸念していた。


