posted by 仲俣暁生(「マガジン航」)
「読み物」のコーナーに深沢英次さんによる「電子書籍についての私的考察メモ」を追加しました。深沢さんは以前『ワイアード日本版』でテクニカル・ディレクターを務め、その後も紙と電子の両方で出版とデザインにかかわってきた方です。深沢さんはこの「メモ」(とはいえ、かなり長大な論考です)のなかで、「電子書籍とはなんだろう」ということを、あらためて一から考え直しています。冒頭の部分から少し引用します。
特に最近の「電子書籍」に関する話題は、「出版印刷配本ビジネス」としての経済的な側面と「読書のあり方」という文化的事象としての側面が同時に語られてしまい、この話をわかりにくいものにしているとも思う。ここでは自分自身の思考実験というか、考えのメモみたいな形で「電子書籍とは何か」を少し絞り込んでみよう。
深沢さんの指摘するとおり、電子書籍をめぐる議論が混乱しやすいのは、「電子書籍」という言葉が、ビジネスから文化、テクノロジーにいたる、多くのものを含んだ複合的な概念だからです。
アマゾンやアップル、グーグルなどのプラットフォーム上で売られるコンテンツだけが電子書籍ではなく、これまでの「ケータイ小説」のようなコンテンツも電子書籍です。「パブー」のようなウェブ上のプラットフォームや、電子書籍部の活動などによって草の根的に広がりつつあるコンテンツも電子書籍なら、国立国会図書館やグーグルが進めている過去の書籍のデジタル・アーカイブ化も電子書籍でしょう。
iPadの登場後は「電子雑誌」への関心も高まっており、iPhoneやiPad向けのアプリや雑誌までふくめて「電子書籍」と呼ぶ人も増えています(appこそが未来の電子書籍の中心をなすのでは、と考える人もいます。ボブ・スタイン「appの未来」)。
キンドルは新しい機種で日本語を含む多国語にも対応し、グーグル・エディションも来年早々に日本でのサービスを開始すると予告しています。日本の大手印刷会社や電機メーカー、書店はそれぞれに独自の電子書籍プラットフォームを構築中で、この秋以降、「電子書籍」をめぐる議論は、一気に現実的かつ具体的な問題にシフトしていくはずです。そのときに必要とされるであろう具体的な議論の叩き台として、この論考をぜひご参照ください。
なお、深沢英次さんは8月26日にポット出版で行われた公開インタビューに登場し、電子雑誌についてのご自身の考えを述べられています(下はその録画です)。「マガジン航」の記事とあわせてこちらもご覧ください。



「電子書籍」について書かれた本たち。このうち『電子書籍の衝撃』と『The Case for the Book』は、すでに電子書籍版も発売されている。