‘お知らせ’ カテゴリーのアーカイブ

読み物コーナーに新記事を追加

2010年8月27日 金曜日

posted by 仲俣暁生(「マガジン航」)

「読み物」のコーナーに深沢英次さんによる「電子書籍についての私的考察メモ」を追加しました。深沢さんは以前『ワイアード日本版』でテクニカル・ディレクターを務め、その後も紙と電子の両方で出版とデザインにかかわってきた方です。深沢さんはこの「メモ」(とはいえ、かなり長大な論考です)のなかで、「電子書籍とはなんだろう」ということを、あらためて一から考え直しています。冒頭の部分から少し引用します。

特に最近の「電子書籍」に関する話題は、「出版印刷配本ビジネス」としての経済的な側面と「読書のあり方」という文化的事象としての側面が同時に語られてしまい、この話をわかりにくいものにしているとも思う。ここでは自分自身の思考実験というか、考えのメモみたいな形で「電子書籍とは何か」を少し絞り込んでみよう。

深沢さんの指摘するとおり、電子書籍をめぐる議論が混乱しやすいのは、「電子書籍」という言葉が、ビジネスから文化、テクノロジーにいたる、多くのものを含んだ複合的な概念だからです。

アマゾンやアップル、グーグルなどのプラットフォーム上で売られるコンテンツだけが電子書籍ではなく、これまでの「ケータイ小説」のようなコンテンツも電子書籍です。「パブー」のようなウェブ上のプラットフォームや、電子書籍部の活動などによって草の根的に広がりつつあるコンテンツも電子書籍なら、国立国会図書館やグーグルが進めている過去の書籍のデジタル・アーカイブ化も電子書籍でしょう。

iPadの登場後は「電子雑誌」への関心も高まっており、iPhoneやiPad向けのアプリや雑誌までふくめて「電子書籍」と呼ぶ人も増えています(appこそが未来の電子書籍の中心をなすのでは、と考える人もいます。ボブ・スタイン「appの未来」)。 

キンドルは新しい機種で日本語を含む多国語にも対応し、グーグル・エディションも来年早々に日本でのサービスを開始すると予告しています。日本の大手印刷会社や電機メーカー、書店はそれぞれに独自の電子書籍プラットフォームを構築中で、この秋以降、「電子書籍」をめぐる議論は、一気に現実的かつ具体的な問題にシフトしていくはずです。そのときに必要とされるであろう具体的な議論の叩き台として、この論考をぜひご参照ください。

なお、深沢英次さんは8月26日にポット出版で行われた公開インタビューに登場し、電子雑誌についてのご自身の考えを述べられています(下はその録画です)。「マガジン航」の記事とあわせてこちらもご覧ください。

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読み物コーナーに新記事を追加

2010年7月7日 水曜日

posted by 仲俣暁生(「マガジン航」)

津野海太郎さんの「書物史の第三の革命」の連載第2回目(「本の黄金時代」としての二十世紀)を読み物コーナーで公開しました。

今回の話題は、20世紀に起きた紙の本の爆発的な量的拡大です。年間の出版刊行点数が日本国内だけで8万タイトルという、現在の本の洪水状態はいかにして起きたのか。「本の黄金時代」とは、言い換えるなら「本の大量生産・大量消費時代」のこと。いまの電子書籍ブームの背景にある、膨大な紙の本のストックに思いをはせるにはうってつけのエッセイです。

Gabriel Zaid "So Many Books"

Gabriel Zaid "So Many Books"

ところでこの連載記事では、書物にかんするさまざまな本が言及されています。今回もメキシコのジャーナリストであるガブリエル・ザイドの “So Many Books” 、フランスの書物史家リュシアン・フェーヴルとアンリ=ジャン・マルタンによる『書物の出現』、日本のメディア史研究者、永嶺重敏の『モダン都市の読書空間』などが言及されています。

しかし残念なことに、日本語で読める後者の2冊は絶版あるいは品切れ状態であり、新刊書店で買い求めることができません。書物史についてのこれらの古典的著作が、紙の本のかたちでは入手困難であることは、「本の大量生産・大量消費時代」における皮肉以外のなにものでもありません。

一方、ガブリエル・ザイドの”So Many Books” のほうは、出版社のサイトで最初の3章までがPDFで公開されており、その内容をただちに知ることができます。ちなみにこの本の英語版を出している出版社、Sort of Books は、ポウル・ボウルズ、ジェーン・ボウルズ、トーベ・ヤンソン、ステファン・ツヴァイク、変わったところではミュージシャンのピーター・ブレグヴァドの作品なども刊行している、1999年に創設されたイギリスのインディペンデント出版社です。刊行点数は少ないですが、1冊1冊の本を息ながく丁寧に売っていこうとする姿勢に好感を抱きました。

この出版社の創業者は社名の由来を、”In short, we publish the sort of books we like.”と述べています。電子の本だろうが紙の本だろうが、出版社がなすべきことは、読まれるべき本を読者に確実に届けることではないだろうかーーそんなことを考えさせられてしまうエピソードでした。

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東京国際ブックフェア2010に出展します

2010年7月4日 日曜日

posted by 仲俣暁生

まもなく7月8日(木)から「東京国際ブックフェア2010」が開催されます。「マガジン航」の発行元であるボイジャーも、7月8日(木)から10日(土)まで、ブックフェアの本展および同時開催される「デジタルパブリッシングフェア」に出展します(詳細はこちらを参照)。

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今年のキャッチフレーズは「そして船は行く」です。このキャッチフレーズのロゴが入ったブックフェア用のパンフレットには、電子書籍ブームという波の高まるなかでボイジャーが考えている「本の未来」の姿が提示されています(7月19日追記:パンフレットのPDFファイルがこちらからダウンロードできるようになりました)。

パンフレットの掲載記事のなかから、ボイジャー執行役員・開発部長である小池利明氏による「ePUB 世界の標準と日本語の調和」を「マガジン航」に先行公開します。

このパンフレットにはさらに、ボイジャー代表取締役 萩野正昭氏による「T-Time―もっと遠く、もっと広く」、筑波大学附属視覚特別支援学校教諭の宇野和博氏による「読書バリアフリーをめざして」、青空文庫呼びかけ人でライターの富田倫生氏による「全書籍電子化計画を越えて―本のインターネットへの旅」といった記事が掲載されています。これらも随時「マガジン航」に転載していく予定です。

一般入場日である7月10日(土)には「デジタルパブリッシングフェア」のボイジャー・ブースにて、「マガジン航」の寄稿者を含むゲストを迎えたトークイベントも開催されます。この日は「マガジン航」編集人の私のほか、以下の方々にご登場いただきます。

・松井 進さん (バリアーフリー資料リソースセンター/副理事長) ※昨年の講演

・海上 忍さん(テクニカルライター)

・藤井あやさん(漫画家) ※寄稿していただいた記事

・米光一成さん(ゲーム作家/ライター) ※寄稿していただいた記事

・小飼 弾さん(「弾言」「決弾」の著者/ブロガー)

また7月9日(金)には、林信行さん(ITジャーナリスト)、大谷和利さん (テクノロジーライター)をお招きした対談式講演も開催します(※大谷さんの昨年の講演)。

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なお、10日の「マガジン航」関連イベントへのご来場者には、特製の「マガジン航」のロゴ入りTシャツをプレゼント。数には限りがありますが、白と黒の2パターンを用意しています(オモテに「航」のロゴ、ウラにはInternet ArchiveとVoyagerのロゴ入り)。どうぞふるってご来場ください。

■関連記事
ePUB 世界の標準と日本語の調和
TIBF2009 ボブ・スタイン講演録
TIBF2009 大谷和利氏講演録
TIBF2009 松井進氏講演録
TIBF2009 萩野雅昭講演録

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読み物コーナーに新記事を追加

2010年6月4日 金曜日

posted by 仲俣暁生(「マガジン航」)

アップルのiPadが日本でも発売されたこともあり、さまざまなメディアが電子書籍時代の本格的な到来を伝えています。書物の歴史がいま、大きな曲がり角を迎えつつあることはたしかでしょう。では、この先にはどんな本の未来が待っているのでしょうか。

いま私たちの目の前で起こっているのは、たんに「電子書籍」という新しい技術や商品の登場ではなく、これまで長く続いてきた書物の生態系に激変をもたらすかもしれない、書物史におけるパラダイムシフトです。この変化がもつ意味は、出版不況からの突破口といった十数年程度のタイムスパンではなく、百年、数百年、場合によっては数千年という、より大きなスケールで考えるべき問題をはらんでいます。

すでに海外では、ロバート・ダーントンの『The Case for Books』をはじめ、電子書籍の登場がもたらす変化を、書物史のなかに位置付けようとする試みがはじまっています。以前、「マガジン航」にダーントンのこの著作についての書評コラム「グーグル・プロジェクトは失敗するだろう」を寄稿してくれた津野海太郎さんが、今秋、国書刊行会から新著の刊行を予定しています。その本に収録される書き下ろしの文章「書物史の第三の革命~電子本が勝って紙の本が負けるのか?」を、今月から何回かに分けて、「マガジン航」で掲載していくことになりました。

今回掲載するのは、「本と読書の世界が変わりはじめた」と題された第一章です。今後も月1、2回のペースで連載していきます。どうぞご期待下さい。

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読み物コーナーに新記事を追加

2010年4月19日 月曜日

posted by 仲俣暁生(「マガジン航」)

読み物コーナーに、ジョン・シラクッサ氏による記事「電子時代の読書~過去そして未来」を追加しました。シラクッサ氏は2000年前後の第一次電子書籍ブームの時代に、Palm Digital Media(元Peanut Press)という電子書籍の会社で働いた経験があり、当時と現在のブームを比較しつつ、本質的な問題に切り込んでいます。日本語にして24000字(原稿用紙で60枚)という長文記事ですが、じっくりお読みください。

この記事は、2009年2月のArs Technicaに掲載された後(原文はこちらで読めます。The once and future e-book: on reading in the digital age)に大いに話題を呼び、Electric Book Works(EBW)から、無料の電子書籍としても配布されるなど、出版の未来について考える際の必読文献となっています。原文が書かれたのは、アップルがiPadを発表し、電子出版への参入を表明する以前(それどころか、アマゾンもまだ初代Kindleを売っていた段階)ですが、「電子書籍(eBookのコンテンツ)」と、それを読むための「読書用端末(eBookリーダー)」を区別すべきであり、重要なのは端末ではなくコンテンツであるという指摘は、いま読んでも示唆に富んでいます。

日本ではまだ、アマゾンのキンドルも日本語に正式対応しておらず、アップルのiPadの発売も5月に延期となり、本格的な電子書籍の発売はこれからと思われます。しかし、この問題に関心を抱くジャーナリストは多く、今年初めのiPadの発表前後から「電子書籍のについて書かれた本」が増えてきました。せっかくの機会なので、いま手元にあるいくつかの本をご紹介します。

電子書籍について書かれた本たち。このうち、それ自体が「電子書籍」としても発売されているのは、佐々木俊尚『電子書籍の衝撃』と、ロバート・ダーントンの『The Case for the Book』。「電子書籍」について書かれた本たち。このうち『電子書籍の衝撃』と『The Case for the Book』は、すでに電子書籍版も発売されている。

佐々木俊尚氏の『電子書籍の衝撃 本はいかに崩壊し、いかに復活するか?』は「ディスカバー携書」シリーズからの紙版のほか、ディスカヴァー・トゥエンティワンのウェブサイトで電子版も発売されています。佐々木氏は本の未来を、先行して電子化のすすんだ音楽の世界になぞらえ、これからの本はネットワーク上に「アンビエント化(遍在化)」して存在するようになり、大量生産・大量消費の時代とはことなる、セルフパブリッシングの時代がくることを期待しています。

こうした見方は、すでに「マガジン航」でも紹介した書物史家ロバート・ダーントンの『The Case for the Books』の、「インターネット上でつくられる多層構造の電子本を夢みる」という考えとも重なります。ちなみにこの本の原書は、すでにキンドル版も発売されていました。ぜひ日本語訳を待ちたいところです(冒頭の「グーグルと出版の未来」は、岩波書店の『思想』(2009年6号)に翻訳が掲載されています)。

この他にもIT系ジャーナリストの西田宗千佳氏による『iPad vs. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争』(エンターブレイン)、在米ジャーナリストの石川幸憲氏による『メディアを変える キンドルの衝撃』(毎日新聞社)などが目につきました。この本はどちらも、キンドルやiPadといった「読書用端末」に焦点を当てていますが、その背景にあるのは佐々木氏が指摘する「プラットフォーム戦争」であり、その奪い合いを通じたビジネスモデルの構築です。

シラクッサ氏の「電子時代の読書~過去そして未来」と合わせてこれらの本をお読みになると、「電子書籍」問題の本質がいっそう理解できると思います。

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