posted by 松永英明(文士・事物起源探究家、絵文録ことのは)
2010年7月8日~11日に開催された第17回東京国際ブックフェア。同時開催としてデジタルパブリッシングフェア2010なども開かれた。わたしが前回、東京国際ブックフェアに行ったのは2005年のことだから、5年ぶりの参加となる。その間、電子書籍の動向も大きく変化したように感じた。
5年前と今の電子本
電子書籍化の流れは前世紀末から始まり、今世紀に入ってから加速した。当初は各社がΣBookのような電子ブックリーダーを独自に開発したり、独自フォーマットを開発して「蔵衛門」などの専用ソフトウェアを売る、という方向性だった。しかし、特に独自の機械を開発したところは、残念ながらいずれも頓挫していった。一方、KeyringPDFを採用したパピレスは、ある程度汎用的なフォーマットを採用することで生き延びていった。
2005年のブックフェアではボイジャー社の無料公開セミナーを聴講した。ここで画期的だと思ったのは、ボイジャーの路線変更だ。独自ソフトT-Timeを開発していたボイジャー社は、T-Time5.5で大きく方向転換し、「液晶画面でjpg画像を表示できる機械ならどれでも電子本を読める」ようにした。携帯でもデジカメでもPSPでも読めるということで、デバイスの制約を取り払ったのである。それは確かに正しい方向だった。
しかし、それから約5年、電子本はなかなか広まらなかった。それが2009年からのKindle、iPadの衝撃で大きな変化が訪れたといえる。独自の電子書籍ツール開発競争は、アマゾンとアップルの二大巨頭がほぼ制覇したといえよう。一般ユーザーにとってのパソコンのOSがWindowsかMacの二択となった状況に似ているといえる。それにより、電子書籍のフォーマットも選択肢が絞られてきた。
そんな状況で、果たして紙の本はなくなるのか、電子書籍という黒船にどう対応するのかという話が盛り上がっている。2010年のデジタルパブリッシングフェアは、非常に重要なターニングポイントに位置しているといっても過言ではない。そこで大きな期待を抱いて、会場に向かった。

東京国際ブックフェア2010の会場となった国際展示場
「本の消費現場で何が起きているのか」
午前中はシンポジウム「本の消費現場で何が起きているのか?」を聞いた。「読むことに関する環境の変化、消費現場の変化をどうとらえるか」をテーマにしたパネルディスカッションである(登壇者は以下の各氏。敬称略)。
・樺山紘一(印刷博物館館長)
・太田克史(編集者・星海社副社長)
・草彅主税(丸善お茶の水店店長)
・司会:仲俣暁生(編集者・「マガジン航」編集人)
樺山さんは歴史家として、星海社の太田さんは出版社の立場として、丸善の草彅さんは販売店の立場としての発言となる。詳細な内容は来年のブックフェア開催時をめどに出版されるそうなので、ここでは手元のメモ(by ポメラ)をもとに、特に電子書籍化に絡む部分について簡単にまとめておくとしよう(他の部分も興味深いので、ぜひ出版時には全文をお読みいただきたい)。
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