posted by 津野海太郎
昨秋、アマゾンで、まもなくロバート・ダーントンの『The Case for Books』という本がでることを知った。でもこれ、なんと訳したらいいのかね。たぶん「本という事件(事例)」あたりなのだろうが、そこに「本の容器」という意味がかぶさっているのかもしれない。
ダーントンは、18~19世紀フランスの出版業界をフィールドとするアメリカの高名な書物史家で、日本でも『革命前後の地下出版』『歴史の白日夢』『猫の大虐殺』『禁じられたベストセラー』などの翻訳がでている。
ハーヴァード大学図書館の館長でもあり、近年は『ニューヨーク・レヴュー・オブ・ブックス』をおもな舞台に、本の電子化にかんする積極的な発言をつづけてきた。おそらくこんどの本も、それらの最近のエッセイをあつめたものなのだろう。

ロバート・ダーントンの新著『The Case for Books』
私は書物史家としてのかれを信頼している。とくに『猫の大虐殺』が好き。文章もいい。そこで、すぐ予約注文しておいたら、ほどなく現物が届いた。長めの序文がついていて、それがたいへん興味ぶかい。
しばらくイギリスにいたダーントンが、ハーヴァードに新しい図書館長として呼び戻されたのが2007年の夏。そのときはすでにグーグル・ブックサーチに向けた図書館蔵書電子化の秘密交渉がはじまっていたという。いやもおうもない。たちまちその渦中にまきこまれたダーントンは、交渉の過程で、グーグルの関心が電子化データの独占とそのビジネス利用にしかないということに気づく。
