2010年2月 のアーカイブ

ボイジャーが”BooKServer”の正式メンバーに

2010年2月25日 木曜日

posted by 仲俣暁生

アメリカのインターネット・アーカイブが推進する世界標準の電子出版配信インフラ構想”BookServer”について、『マガジン航』ではこれまでに何度か紹介してきましたが、ボイジャーがこのプロジェクトの正式メンバーとして参加し、この構想を共同で推進することに合意したとの発表が、昨日行われました(報道資料はこちら)。

BookServerにはボイジャーのほか、Ingramやトロント大学なども参加している。

ニューヨークで行なわれた出版カンファレンス"Tools of Change for Publishing"で、Internet Archiveのブルースター・ケールはボイジャーとの提携を発表。

インターネット・アーカイブは1996年の設立以来、180万冊を超える電子化された書籍のファイルをはじめ、音楽・音声記録、映像、ソフトウェア、さらに1,500億ものWebページ(Wayback Machineとして有名)を収集してきましたが、それらに加えて「全ての人々が利用できる、電子出版の貸出と販売を可能とする規格(アーキテクチャー)」づくりを推進しています。昨年10月に発表されたこの構想の名前が”BookServer”です。

すでにこのプロジェクトには、アドビやオライリーのほか、米国最大の取次会社(ホールセラー)のイングラム、トロント大学、アマゾンのライバルとも目されるカナダのKoBoなどが参加しており、ボイジャーは日本からの初の参加メンバーになります。

BookServerの日本での展開については、今後とも『マガジン航』で報告してまいります。興味のある方はぜひ、以下の過去記事もご覧ください。

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Bookserver訪問記

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カタリココ、本の未来にむけての種まき

2010年2月22日 月曜日
posted by 大竹昭子(作家)

カタリココがはじまったのは2007年1月、西麻布のレイニーデーブックストアー&カフェでのことである。前年の秋だったか、片岡義男さんが日経新聞の文化欄に、こういうブックカフェが出来た、雨の日に朗読会をするのにぴったりだと書いていらしたのを読んだ。『スイッチ』『コヨーテ』の版元スイッチ・コーポレーションの地下にブックカフェが開いたのをそれで知った。

本が売れないだの、取次制度が悪いだの、出版点数が多すぎだの、絶版処置が早まっているだのと、本を書く者を不安にさせる話題ばかりで暗澹たる気持ちになっていた時期だった。だからと言って書くのを止めるわけにはいかない。ならどうすればいいかとつらつらと考えていた。

2009年6月20日、森岡書店にて堀江敏幸さんを招いた回の風景。撮影:山本寿人
2009年6月、森岡書店にて堀江敏幸さんを招いた回。撮影:山本寿人

さっそくそのカフェに出むいて本棚のある落ち着いた空間を目にしたとたん、愚痴っているよりこういう場所で元気の湧いてくることをしようと思った。文句や悪口を言うとエネルギーの出る人もいるけれど、私はポジティブなことにむかっていないと活力が出てこない。

ゲストを招いてトークと朗読の会をしてはどうだろうともちかけると、『コヨーテ』編集長の新井敏記さんも賛同してくれた。「朗読会」では古くさいので「語り」と「ここ」を結びつけて「カタリココ」と命名し、10回開催してインタビュー内容の一部を『コヨーテ』に再録、翌年からは都内の古書店とカフェに会場を移して継続し現在に至っている。2010年の今年も10回開催の予定だ。

本が売れないと言われるが、本当に本など必要ないと人は思っているのだろうか。私にはとてもそうは思えない。「本離れ」は望んでそうなったというより、さまざまな外圧に押された結果であり、DVDが普及したためにビデオが不要になったような状況とは根本的に異なるのだ。

若者のメインの楽しみが本と映画だったころはだれもが本のことを話題にした。読めなくても本が欲しかった。触れているだけでカッコいい時代だったのだ。ゲームあり、インターネットあり、各種のイベントありと選択肢の多い現代では、読みたい本を見つけるのは九十九里浜でコンタクトレンズを拾うようにむずかしい。

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アクセシブルな教科書としての電子書籍

2010年2月17日 水曜日

posted by ろす (08th Grade Syndrome)

はじめに

この度寄稿することになりました「ろす」と申します。Twitterでは@lost_and_foundというアカウントで呟いています。現在のところ職業は公にしておりませんが、出版業界の人間ではありません。08th Grade Syndrome というブログで、電子書籍に関する記事をネットユーザの視点で掲載しています。また個人的な興味から電子書籍の国際標準規格EPUBの仕様書を日本語訳して公開したりしています。仕様書は本稿の最後にリンクを貼っておきますのでそちらからご利用ください。

今回はそのEPUBに絡めて、アクセシビリティと教育に関するお話をしたいと思います。2010年1月にアップルが発表した電子書籍のオンラインストア iBookStoreの提供フォーマットにEPUBが採用され、この国際標準規格には大きな注目が集まっています。EPUBについてはしばしば「XHTMLとCSSファイルをZIPアーカイブにしたもの」として語られています。これは確かにわかりやすい表現ではありますが、私はこのことに複雑な思いを抱いてしまいます。現在EPUBではXHTMLで書かれた文書だけではなく、DTBookという形式で書かれた文書も扱うことができるようになっています。私はDTBookについて、とりわけ我が国ではもっと語られる機会が増えてもよいのではないかと感じています。

DTBook=DAISY 3=最新のアクセシブルなデジタル図書

DAISYという言葉があります。視覚障害やディスクレシア(識字障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)など、印刷された本を読むことが困難な人が利用できるように工夫されたデジタル録音図書を指します。DAISYは国際非営利法人DAISY コンソーシアムによって策定されています。

もともとはCD-ROMによる音声録音メディアという形態で提供されていたDAISY図書ですが、バージョンを重ねる中で音声データのほかにテキストデータや画像データも含むマルチメディアな規格として発展し、現在は健常者が普通の本のように読むこともできる、まさに電子書籍と呼ぶに相応しいものになりました。実は先ほど述べたDTBook(DAISY Digital Talking Book / DTB)はDAISY の最新のバージョンであるDAISY 3を指すものなのです。また、米国の標準規格として認証されたためANSI/NISO Z39.86という別名もあります。

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読み物コーナーに新記事を追加

2010年2月11日 木曜日

posted by 仲俣暁生

読み物コーナーに、ポット出版の沢辺均さんによる「ジャパニーズ・ブックダムの夢」という記事を追加しました。昨年年9月に行われたでるべんの会(出版関係勉強会)での講演をまとめたものです。沢辺さんが提案している「ジャパニーズ・ブックダム」構想とは、ひとことでいえば、「日本語で書かれたすべての本が全文検索できるサービス」。グーグルのブック検索をめぐる集団訴訟が日本の出版界に投げかけた波紋や、国立国会図書館の長尾真館長の提案する電子図書館構想に対する、出版業界側からの具体的な提案として大いに注目に値します。

この記事ではそのほか、沢辺さんが中心となって活動している中小出版社の団体「版元ドットコム」(本日現在で158社が参加)や、筑摩書房・河出書房新社・平凡社・青弓社・中央公論新社・二玄社・早川書房・ポット出版の8社が共同で始めた新しい責任販売制度「35ブックス」の成り立ちや狙いについても詳しく語られています。

なお、この講演録の無償ダウンロード版を含む図書館専門誌『ず・ぼん』15号の電子書籍バージョン[完全版、記事単位のバラ売り版の両方あり]が、理想書店にて発売中です。こちらもぜひご覧下さい。

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「2010年代の出版を考える」イベント報告

2010年2月7日 日曜日

posted by 仲俣暁生

2月1日の夜、東京・阿佐谷のAsagaya/Loft Aで、「2010年代の出版を考える」というトークイベントを開催しました。これはそのイベントの結果報告です。

壇上向かって右から沢辺、橋本、仲俣、高島の各氏。会場は100人を超える観客で満員。

壇上向かって左から沢辺、橋本、仲俣、高島の各氏。会場は100人を超える観客で満員。

登壇者はポット出版の沢辺均さん、語研の高島利行さん、「情報考学」という書評ブログで知られる橋本大也さん、そして「マガジン航」編集人の仲俣の四人。

このほか、リアルタイムでtwitterに中継する(いわゆる「tsudaる」)役割を、この言葉の語源であるジャーナリストの津田大介さんと、畠中英秋さんが買って出てくださり、ネット中継もポット出版が行ったUstreamのほかに、深水英一郎さんがニコニコ生放送でオンエアしてくれるなど、ITに詳しい人たちの助力により、来場者以外の方も参加できる、画期的なトークイベントになりました。

ポット出版の那須ゆかりさんによる「2010年代の出版を考える」イベントレポートで紹介されているとおり、当日の来場者数は立ち見も含め140人、このほかUstreamの視聴者が最大時で1150人、ニコニコ生放送での視聴者が1149人、コメント数が2984人と、予想を超える多くの人々の参加が得られました。ネット系のイベントでは、すでにUstreamとTwitterの組み合わせによる中継がさかんに行われていますが、出版系のイベントでここまでのリアルタイム性とインタラクティブ性が実現できたのも、多くの方の協力のおかげです。あらためてここでお礼を申し上げます。

来場者の多くが出版関係者(出版社の比率が最大でしたが、書店、取次、フリーランスのライターや編集者の方も多数)であったにもかかわらず、iPhoneユーザーやTwitterユーザーの比率がかなり多かったのは、予想していたとはいえ、やや驚きです(キンドルをすでに持っているという人も10人以上もいました)twitter上でイベントの告知をしたこととも関係があると思いますが、個人レベルでは、出版人のIT環境への対応はかなり進んでいるな、という印象を受けました。

私自身が登壇していたため、当日のトークの内容については客観的な評価ができないのですが、幸い、ネット上に来場してくれた方によるすぐれた記事がいくつも公開されています(EBook2.0 Forumの「2010年の出版」視聴記、新刊JPニュースのぶっちゃけ&爆弾発言連発!? 「2010年代の出版を考える」トークイベントをレポート!、Traveling LIBRARIAN−旅する図書館屋の雪の電子書籍元年!?」、浅草・吾妻橋発 てきとーじゃーなるの「2010年代の出版を考えるヨッパライ」など)ので、ぜひこちらをご覧下さい。

当日参加できなかった方も、ライブ中継を行ったUstreamの映像が、前半部分のみ、いまも録画で視聴できますので、こちらをご覧下さい。また、twitter上のハッシュタグ #pub2010 のタイムラインも、いまものんびりと継続中です。

なお、この日のトークの内容を電子出版して販売することも計画しています。詳細が決まりしだい発表しますので、こちらもご期待ください。

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電子書籍に高まる出版社の期待

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