2010年1月 のアーカイブ

欲しいものを手に入れたら

2010年1月13日 水曜日

posted by ダン・ヴィーセル (Dan Visel)

今日は一年で最も日が短く(注・原文if:bookに2009年12月に投稿された)、ニューヨークはじきにぬかるみに変わる一面の雪に厚く覆われており、この世界にがっかりしないでいるのは難しい。民主党はヘルスケア改革を法案を通すためと称して骨抜きにし、オバマはコペンハーゲンで何ら意義あることを成し遂げられず、アフガニスタンでの戦争が10年代にも続くことが明らかとなり、銀行屋どもは見たところ何も有益なことをしていないにも関わらず百万ドルのボーナスを手にし、メキシコシティーがニューヨーク州よりも先に同性愛者の結婚を合法化している。

ゼロ年代の終わりとなる12月になり、何が達成されたか、また何が達成されるはずだったかの両方を振り返りたくなる。何かしら実現するはずだったのにと思うと失望は一層深くなるものだ。一年前、オバマがゼロ年代の長いトンネルの終わりを照らす光に思えたように。

今年は、電子書籍が5年前には想像もできなかったくらいたくさん報道された年の瀬でもある。ただ同時に、私は近頃何を見ても興奮しにくくなっている。デバイスについて大層騒ぎになっているが、それがまだ未熟なのは明らかだろう。アップルが遅れに遅れているタブレットを発表し、グーグル発のデバイスが次々とそれに続けば、どのデバイスにしろ一年かそこらで時代遅れになるに違いない。出版についてはいろいろ言われているが、読者予備軍にとって特に興味をひくものではない。出版社はハードカバーと比較して電子書籍を発売する日付や、単一のディストリビューターに独占権を認めるかどうかなんてことを議論しているからだ。それは特に面白い話じゃないし、この5年間を念頭に置けばなおさらである。

現在の議論において、本は単なる日用品であり、市場において最大の利益となる価格で消費者に渡るものである(これと似た議論が、ソーシャルネットワークの世界についてもなされたようだが、こちらはTwitterの140文字制限でコミュニケーションを行う困難をクレジットカードでの購買記録に置き換えるという天才的なアイデア――手遅れの不況のさなかとはいえ――をもつ新しいソーシャルネットワークのプラットフォームであるBlippyで論理的帰結に達しているようだ)。

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読み物コーナーに新記事を追加

2010年1月8日 金曜日

posted by 仲俣暁生

読み物コーナーに、扶桑社の梶原治樹さんが昨年12月に出版専門紙「新文化」に寄稿した文章をほぼそのままのかたちで転載した、「30年後の出版界のためにいまできること」を追加しました。

梶原さんは日本雑誌協会のデジタルコンテンツ推進委員会に参加しているほか、でるべんの会(出版関係勉強会)の会長もつとめており、出版業界の抱える問題について積極的に発言し、活動なさっている方です。出版界内部からの未来に向けた貴重な提言をぜひお読み下さい。

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巨大電子書籍サイトがやってくる前に

2010年1月6日 水曜日

posted by 旅烏 (万来堂書店2nd 管理人)

皆様初めまして。万来堂日記2ndというブログをやっております旅烏と申します。

少しだけ新刊書店にいたこともあるのですが(少しだけです。ほんの少しだけ)、現在はいわゆる新古書店に勤務しております。そのくせ、自分の勤務先ではあまり金を使わず、毎月新刊を2~3万円位購入し、「なぜ貯金ができないんだろう?」と頭をひねる不良店員でありますが。

ブログでは気の向くままにあることないこと書いているのですが、出版業界について書いたことも度々ありまして。それを読んでいただいた『マガジン航』さんから、何か書いてみませんかと声をかけていただいた次第です。

昨年2009年は、海の向こうで電子書籍をめぐる動きが活発化していることが、日本でも多く報じられた年でした。例えばグーグル「ブック検索」の集団訴訟和解についての問題。この和解は無料の検索に関するものであったかと思いますが、有料サービスもきちんと視野に入れているようです。

そしてアマゾンのキンドル、バーンズ・アンド・ノーブルのnook、ソニーのSony Reader等々、さまざまな電子書籍用デバイスが覇を争おうという様相(比較記事はこちらなどいかがでしょうか)。また、iPodやiPhoneでブイブイ言わせているアップルの動きも囁かれているところです。

日本もこの競争の場となるのは避けられないところでしょう。日本だけ蚊帳の外に置いておいてもらえると考えるのも、不自然な話です。 (続きを読む…)

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新年にパブリック・ドメインについて考える

2010年1月4日 月曜日

posted by 仲俣暁生

あけましておめでとうございます。「マガジン航」を今年もよろしくお願いいたします。

さて、1月1日を「パブリック・ドメイン・デイ」と呼ぶ習慣があることを、青空文庫の富田倫生さんが書いた「ハッピー・パブリック・ドメイン・デイ!」という記事を読み、はじめて知りました。

文学作品や美術作品にかんする国際的な著作権保護条約であるベルヌ条約では、著作権保護期間の算定の区切りを1月1日としているため、元旦を迎えるごとに、新たな作品がパブリック・ドメインに加わることになるのです。そこで、この日を「パブリック・ドメイン・デイ」と呼ぶようになったとか。なんとも粋な表現をする人がいるものです。

今年の元旦でパブリック・ドメインに加わった日本の主な作家として、富田さんは永井荷風高浜虚子北大路魯山人らの名を挙げ、この日にそなえて青空文庫に彼らの作品を用意してきた、と書いています。限られた作家の主だった作品をのぞけば、町中の書店で日本の近代文学作品と出会うことは難しくなっています。近代文学と現代の読者との出会いにおいて、いま青空文庫が果たしている役割はきわめて大きいと言えるでしょう。

インターネットの普及によって、電子的なアーカイブの重要性が高まっています。商業的な観点からは価値を失い、市場から退場した著作物でも、パブリック・ドメインに入ったものに関しては、紙の本というかたちにさえこだわらなければ、電子的なアーカイブのなかに置かれることで、いつでもアクセスできる状態が実現できます。

グーグルをはじめとする営利企業が電子アーカイブ事業に積極的に参入してくるなかで、日本の青空文庫や、アメリカのインターネット・アーカイブのような非営利の電子アーカイブの重要性は、これからますます高まっていくでしょう。そのときに考えたいのは、著作物が「パブリック・ドメイン」に置かれている、ということのもつ本質的な意味です。それはたんに経済的な意味で「タダ」である、という以上のことであるはずです。

「出版(publishing)」という言葉を、紙の本を刊行することだけに限定して用いるのではなく、あらゆるメディアにおいて「ものごとをpublicにする」という意味をもつことに、多くの人があらためて注目するようになっています。インターネットはすでに、立派なpublishingのツールです。

「出版」という行為は作者や出版社にとっての私的な商業活動であると同時に、公的領域にかかわるパブリックな活動としての側面をつよくもっており、その両面をもつことが、出版の最大の魅力でした。しかし、「出版不況」と呼ばれる事態が長期化するなかで、早期の絶版や長期の在庫切れが示すように、出版という行為のパブリックな側面が軽視され、私的で商業的な側面ばかりが目立つようになってしまいました。

そうしたなか、日本でも欧米諸国に足並みを揃え、著作権保護期間を現行の作者の死後50年から70年に延長しようという動きが絶えません。保護期間延長問題の是非について考えることは、作者や出版社にとって「出版とは何か」ということを、その根本から考えることでもあります。あらたな「パブリック・ドメイン・デイ」を迎えた機会に、あらためて「パブリック・ドメイン」という言葉に思いを馳せたいと思います。

■関連記事

ハッピー・パブリック・ドメイン・デイ!(そらもよう)
Public Domain Day 2010 and Beyond (Creative Commons)
Public Domain Day website
What Could Have Been Entering the Public Domain on January 1, 2010? (Center for the Study of the Public Domain)

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